📄 2023年5月公開
当事務所では、従業員向けに交付する和文・英文雇用契約書(労働条件通知書)の作成および英文翻訳を行っています。
また、オリジナルの雇用契約書や人事労務管理の諸規程・契約書などの英文翻訳を作成する時間がない企業様向けには、既成の英文テンプレートも販売しています。
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日本人・外国人に限らず、従業員に交付する雇用契約書や労働条件通知書は、労働法の基準に沿った適法な内容で作成する必要があります。
その上で、外国人従業員に対するものは、本人の母国語、または公用語である英語で翻訳文を付けておくと効果的です。加えて、初めて日本で働く、日本の労働環境に不慣れな外国人には、労使トラブルになりそうなポイントについて、口頭でも詳しい説明を加えるなど特に配慮して雇用契約を取り交わしましょう。
このページでは以下について解説・ご案内しています。ご覧になりたい項目をクリックしてください。
1. 労働条件の通知は雇用主の義務 2. 労働条件通知書よりも雇用契約書の締結を 3. 雇用契約書作成時の重要ポイント 4. 外国人社員に交付する雇用契約書 ~ 重要ポイント ~ 5. 当事務所オリジナル・雇用契約書(日本語・英語並記)見本と見本書式・有料販売について ~ 料金とお申込みの流れ ~ |
1. 労働条件の通知(明示)は雇用主の義務
従業員の採用を決定したら、彼らに対して、賃金や労働時間・職務内容などを始めとする必要な労働条件を適切に通知(明示)しなければなりません(※ 労働基準法第15条1項)。
労働条件を明示する義務があるのは、新たに採用する全ての従業員です。
雇用期間の定めがない、いわゆる「正社員」だけではなく、パートやアルバイト社員・有期雇用の契約社員含め、外国籍の社員ももちろん対象になります。
労働契約自体は「うちで働いてください」、「はい、働きます」というような、口頭のみの取決めであったとしても有効に成立はします。
しかし、賃金や休日、始業・就業時間など、細かい特定の項目については口頭のみの説明で済ますことはできず、文書やメール(労働者がメールでの通知を承諾した場合のみ)で通知しなければなりません。
雇用主がこうした労働条件を適正な方法で明示しなかった場合は、30万円以下の罰金が科されることがあります(労働基準法第120条1号)。
ちなみに、外国人労働者の雇用について言えば、労働基準法(第3条)では、雇用主が労働者を雇用するときに、賃金などの労働条件に関して「国籍による差別をしてはならない。」と規定しています。
したがって、外国人労働者に対する処遇についても、労働基準法以外の労働契約法、最低賃金法、労災保険法、雇用保険法、健康保険法、厚生年金保険法などの労働者に関する様々な法律は日本人同様に等しく適用されます。
この点を踏まえた上で、国籍はもちろん、正社員やアルバイト社員などの雇用形態にもかかわらず、新たに採用する全ての従業員に対して、適正な労働条件の決定と通知を行う必要があります。
なお、外国人労働者に対しては、雇用対策法の下、2007年10月、事業主向けに外国人労働者の雇用改善や様々な法律の遵守、外国人雇用管理責任者の配置などを努力義務としたガイドライン、「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」(厚生労働省)が公開されました。
このガイドラインにも「外国人を雇用するときは、労働条件を明示し本人に通知すること。」と明記されています。
外国人を雇用している事業所は、このガイドラインに目を通し、内容を理解されておくことをお勧めします。
・ 外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針 (厚生労働省ウェブサイト)
・ 外国人雇用はルールを守って適正に (厚生労働省/令和4年6月版)
2. 労働条件通知書よりも雇用契約書の締結を
前述1のとおり、労働基準法では雇用主が労働者の採用にあたり、労働条件を文書やファックス・メールなどによって、労働者に明示することを義務付けていますが、「雇用契約書」の取り交わしまでは求めていません。
では、「労働条件通知書」と「雇用契約書」の違いは何でしょうか。
いずれにおいても、労働者に対して明示(通知)しなければいけない項目(労働契約の期間・就業する場所・賃金・業務内容など)は同じです。
違う点は、労使双方の署名・捺印の有無です。
労働条件通知書は、雇用主が法律で定められている一定の労働条件を文書で労働者個人に交付するもので、一方通行的な「通知書」です。
一方、雇用契約書は労働条件について、雇用主と労働者が合意をし、その証明として書面に双方の署名・捺印をし、2通の原本を作成、それぞれ1通ずつの原本を保管しておく「契約書」です。
労働基準法上は、労働条件通知書あるいは雇用契約書、いずれの方法によっても雇用主としての、労働条件の明示義務は果たしていることになります。
ちなみに、日系企業の場合、中小企業はもちろん中堅・大企業であっても、多くの企業が雇用契約書ではなく、労働条件通知書を交付しているケースが多いように感じます。
ですが、労使双方の合意・確認までを含めた雇用契約書を取り交わしていない企業の場合、いったん労働条件に関する労使トラブルが起こってしまうと「言った」、「いや、聞いていない」と水掛け論になり解決に時間がかかってしまいます。
また、労使紛争に発展しないまでも、採用した従業員が事前の労働条件の確認不足によって不満を募らせ、入社しても短期間で退職してしまうケースも、経験上よく見られます。
このような労使双方にとって、残念な結果を招かないためにも、雇用主として一方的に雇用条件を通知する労働条件通知書ではなく、雇用契約書を取り交わし、労働者の合意を得た上で、安心して入社してもらうことが長期の雇用継続につながるのではないかと思います。
雇用契約書作成にあたっては、特に給与や昇給などの重要な待遇面について、将来トラブルに発展することがないよう、正確で適正な表記、表現で作成するよう心懸けてください。
なお、外国人労働者に関しては、出身国や新卒・既卒の別、職種あるいは個人の性格によっても違うので一括りにはできませんが、給与や業務内容、その他の待遇面を最重要視する方は一般的に日本人に比べて多いようです。
ですので、外国人を採用する場合は特に、労働条件を一方的に通知する「労働条件通知書」ではなく、労使双方が合意・署名する「雇用契約書」を取り交わしておくことをお勧めします。
外国人労働者と取り交わす「雇用契約書」の作成ポイントについては、後述の「4. 外国人社員に交付する雇用契約書 ~ 重要ポイント ~」で確認してください。
3. 雇用契約書作成の重要ポイント
ポイント① 労働法に沿った適法な雇用契約書の作成・交付を
労働条件通知書や雇用契約書によって労働者に明示しなければならない項目と、その通知方法は労働基準法で、以下三つに分けて定められています。
雇用主は、以下の項目を全てカバーする内容の雇用契約書などを作成し、適法な方法によって、従業員に労働条件を通知する義務があります。
■ ① 書面またはファックスや電子メール・SNS等で必ず明示(通知)しなければならない項目 ※ 雇用契約書に記載して本人に通知しなければならない項目 ・ 労働契約の期間 ・ 有期労働契約を更新する場合の基準 (例: 正社員なのか、有期の契約社員なのか、契約社員の場合、契約の満了時期はいつなのか、契約更新があるのか、更新をする場合はその要件など) ・ 就業の場所、従事する業務 (例: 労働者が実際に労働する職場の住所や採用後に従事する業務内容など ) ・ 始業・終業の時刻、時間外労働の有無、休憩時間、休日、休暇、2交代制で就業させる場合における就業時転換に関する事項 ・ 賃金額、計算や支払い方法、締切日、支払時期 ・ 退職に関する事項(解雇の事由を含む) ● 通知の方法 基本的に文書で交付しなければなりません。 ただし、2019年4月の労働基準法施行規則の改正により文書に加えて、従業員本人が承諾した場合に限り、ファックスや電子メール・SNSなどによる通知も可能になりました。なお、電子メールやSNSで明示する場合は、印刷が可能な形式(メール本文が印刷できることや印刷可能な添付ファイル形式)で送信しなければなりません。 ※ 労働基準法施行規則第5条4項 |
■ ② 必ず明示しなければならないが書面でなくてもよい項目 ・ 昇給に関する事項(退職金や賞与については除く) ● 通知の方法 労働条件通知書や雇用契約書などの文書で交付または該当する項目が記載されている就業規則や辞令書などで通知することも可能です(口頭でも可)。 ※ 労働基準法関係通達 (H11.3.31基発168号) |
■ ③ その会社に就業規則などで決まりがある場合は明示しなければならない項目 ※ 雇用契約書に記載して本人に通知しなければならない項目 ・ 退職金支払いの規定がある場合、その規定が適用される労働者の範囲や退職金の決定・計算・支払い方法・支払い時期 ・ 退職金以外の臨時的な賃金(慶弔金など)、賞与、最低賃金額に関する事項 ・ 労働者に負担させる食費・作業用品・その他に関する事項 ・ 安全衛生に関する事項 ・ 職業訓練に関する事 ・ 災害補償や業務外の傷病扶助に関する事項 ・ 表彰・制裁に関する事 ・ 休職に関する事項 ● 通知の方法 労働条件通知書や雇用契約書などの文書で交付または該当する項目が記載されている就業規則などで通知することも可能です(口頭でも可)。 |
ポイント② トラブルが起きやすい事項について具体的に明記する。
以下の4点は具体的に明記されていないと、その適用や運用をめぐって判断があいまいになり、将来トラブルになりやすい要注意項目です。
労働条件通知書や雇用契約書を作成したら、これらの項目は特に念入りに、従業員にとって、わかりやすく容易に理解できる表現になっているか確認してください。
① 有期雇用契約の場合、契約期間、また、契約の更新があるのかどうか。
雇用契約の更新がある場合は更新の基準や、契約更新をしない場合、契約満了何か月前までに労働者に通知するかなど。
② 年次有給休暇の取得時期や取得方法
③ 基本給・時間外労働時の賃金、賞与の支払や昇給、みなし残業手当など主に賃金面について
④ 試用期間含む解雇に関する事由
なお、これらの項目も含め各項目の通知を就業規則の交付で代用する場合は、就業規則も併せて配布するか、就業規則が容易に閲覧できるイントラネットのアドレスを記載するなどの対応が必要です。
4. 外国人従業員に交付する雇用契約書 ~ 重要ポイント ~
この項目では、主に外国人従業員に交付する労働条件通知書や雇用契約書を作成する上で注意したいポイントについて解説します。
外国人従業員、特に初めて日本で働く外国人に対しては、労働条件に加えて、できるだけ労働法や慣行など日本の労働環境に関する状況を本人によく説明し、理解してもらった上で雇用契約を取り交わしておくといいでしょう。
なぜなら、既卒で母国や海外での就労経験はあるものの、来日経験がなく、日本文化や労働環境に全く知識がない外国人が初めて日本で働き始めると、長時間労働や上司・同僚との関係性など母国と全く異なる職場環境に驚き、順応できず、結果、せっかく就労ビザを取得して来日・入社したのに、あっという間に帰国してしまうというケースが少なくないからです。
このようなことにならないよう、雇用契約を取り交わす課程で、できるだけ入社後の労働条件に加えて、日本の労働環境に関する情報を提供しておくと「そんなことは聞いていなかった」というようなことにならず、早期退職・帰国のリスクを防げるのではないかと思います。
① 雇用契約書の締結は就労ビザ申請手続きに入る「前」に
外国人の採用を決定した場合、内定者の就労ビザ手続きに入る「前」に、雇用契約書の取り交わしをしてください。
たとえば、外国人の採用を決めた企業が一日も早く内定者に働いてもらう目的で、細かい雇用条件の明示と合意作業を省略し、早々に就労ビザの具体的な取得手続き(留学生採用の場合は「在留資格変更許可申請」、海外から呼び寄せる場合は「在留資格認定証明書交付申請」)に着手するケースがあります。
そのようなケースでは、重要な雇用条件をあらかじめ細かく通知せず、たとえば「給料は●●円で」といった程度の大まかな条件だけを口頭で、あるいは労働法の最低基準を満たしていない、紙一枚程度の簡単な労働条件通知書の交付で済ませていることが多いようです。
このようなやり方は、前述したような労務管理上の問題もありますが、それに加えて、就労ビザ申請手続きに関して、後々、問題が起こるリスクがあります。
外国人の就労ビザ申請時には、企業規模の大きい事業所をのぞく多くの雇用主企業は、出入国在留管理庁に対して、雇用契約書あるいは労働条件通知書の写しを提出しなければなりません。
必要な提出書類は雇用契約書の他にも多くあるため、外国人と雇用主は、雇用契約書の作成と並行して、それらの書類の作成・収集準備に入ります。
そして、双方共に時間と手間をかけて、必要書類を揃え、いざ出入国在留管理庁に就労ビザ申請をしようと、雇用契約の詳細について最終確認をしたところ、提示された雇用条件が外国人の希望に合わず、結局、内定を辞退されてしまったという事案も実際にあるのです。
このような事態は、雇用主と外国人双方に時間と労力のロスという残念な結果をもたらします。
特に企業が就労ビザ申請の手続代行を行政書士や弁護士など、外部の専門家に依頼していた場合は、併せて金銭的な被害も被ることになるでしょう。
このようなリスクを避けるためにも、採用者が内定したら、最初に雇用条件を明示、労使双方の合意を確定した後で、就労ビザの手続に着手することをお勧めします。
② 就労ビザの取得・更新を条件とする「停止条件」を追加する。
採用を内定した外国人は、入管局によって就労ビザが許可、または更新されなければ日本で(御社で)働くことはできません。
就労ビザが許可・更新されなかったことによって発生する雇用契約に関する労使トラブルを避けるためにも、雇用契約書には、就労ビザの許可・更新がされない場合は、その雇用契約が無効であることを明確に示す、以下のような条項を入れておきます。
◎ 記載例 「この雇用契約は、日本政府の正当で就労可能な在留資格の許可または在留期間の更新を条件として発効する。」 ※ 上記英訳例 This contract shall be subject to the Employee's having a proper working visa and stay permission in accordance with Immigration Laws in Japan. |
③ 外国人の母国語または英語の翻訳文を添付する。
企業規模にかかわらず、日系企業の多くは外国人社員に対しても、日本人に対するものと同様の日本語だけの雇用契約書や就業規則を交付しているようです。
その会社の従業員として、必ず知っておかなければならないルールが示されているものが雇用契約書や就業規則です。
ですが、日本語能力が比較的高い外国人であっても、表現が特殊な雇用契約書や長文の就業規則を読んで、正確に理解するのは難しいはずです。
たとえ、法律で決められたとおりの方法で雇用契約書などを作成・交付しても、それを受け取る社員が肝心の内容を十分に理解できていないのであれば意味がありません。
ですので、社員が雇用契約書や就業規則の内容をスムーズに理解できるように、できれば本人の母国語で、それが難しいのであれば多国籍の社員向けに公用語版として、シンプルな英語で翻訳された文書を作成して交付することを検討されてはいかがでしょうか。
既存の雇用契約書を、今すぐに外国語や英語に翻訳するのが難しいのであれば、厚生労働省がインターネットで公開している、外国語版の労働条件通知書のモデル版を利用することもできます。
2023年5月現在、英語、中国語、韓国語、ポルトガル語、スペイン語、タガログ語、インドネシア語、ベトナム語の8か国語版が公開されています。こうしたモデル版を参考にして、会社の個別の状況・労働条件に応じた労働条件通知書や雇用契約書を作るのもいいでしょう。
・ 外国人労働者向けモデル労働条件通知書 (愛知労働局/厚生労働省ウェブサイト)
5. 当事務所オリジナル・雇用契約書(日本語・英語並記)のサンプル
以下の雇用契約書3点は当事務所オリジナルの雇用契約書(日本語・英語並記版)の見本です。
各見本の記載項目の内容はごく一般的なものですので、参考にされる際には御社の実情にあった内容に訂正・加筆した上でご利用ください。
※ 各記載例の文末・アドバイス欄も必ずご確認ください。
① 外国人社員用・日英雇用契約書サンプル(フルバーション/全10ページ)
② 外国人社員用・日英雇用契約書
(無期雇用 契約社員用・就業規則&賃金規程がある場合/全2ページ)
③ 外国人社員用・日英雇用契約書
(有期雇用 契約社員用・就業規則&賃金規程がない場合/全3ページ)
以上の見本については、御社の実情にあった内容に変更される際に、自由に書き込み・訂正が可能なオリジナルファイル(ワードおよびエクセル)を有料でお分けしています。
また、これらのファイルを利用して御社独自の雇用契約書を作成される際に必要な、法律面のアドバイスを別途ご希望の場合は、併せて対応をさせていただきます。
料金は以下のとおりですので、ご希望がございましたらお問い合わせください。
※ サービス内容について、ご不明な点がございましたら何なりとお尋ねください。
※ 当事務所では雇用契約書以外の主に人事労務管理に伴う各種契約書・覚書・規程の英文翻訳にも対応しています。
■ 販売料金
販売ファイル | 料 金 |
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① 外国人社員用・日英雇用契約書サンプル (フルバーション/全10ページ)* ワードファイル | 10,000 円(税別) |
② 外国人社員用・日英雇用契約書 (無期雇用 契約社員用・就業規則&賃金規程がある場合/全2ページ)* エクセルファイル | 2,000円(税別) |
③ 外国人社員用・日英雇用契約書 (有期雇用 契約社員用・就業規則&賃金規程がない場合/全3ページ)* エクセルファイル | 3,000円(税別) |
④ 作成時のアドバイス・加筆に伴う和文英訳料金 | * 相談内容および最終的な英訳量に応じてご相談 |
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